2011/03/04

「アメリカの大学に入るのは簡単」という都市伝説(1)

この都市伝説、本当に誰が言い出したんだろう。問い詰めてやりたい。

それはさておき。

「大学入試カンニング」、話題になってますね~。個人的にメディアの取り上げ方が吊るし上げ状態なことには違和感を感じています。カンニングは勿論許容されるべきではないけど、殺人でも犯したかのような扱いは変。

この事件を受けて、脳科学者の茂木健一郎さんが、日本の入試システムについて批判的なツイートをされる中で、ハーバードを引き合いに出されていました。
Harvardの入学願書の要項みると、ほんと面白いよ。「君の作品をCDで送るかい?」とか、「どんなスポーツやりたいか書いて」なんて項目があるんだからね。 http://bit.ly/hz0jtD
ハーバードが求めているのはcurious, energetic and passionate students。日本の大学が求めているのは、小賢しいペーパーテストを解くことができる、従順な子羊たち。http://bit.ly/ibKLTi
入試(3)アメリカのSATは、日本の感覚から言えば簡単な問題であるが、これは一つの叡智である。共通して課される問題は、普通に高校生活を送っていれば解ける範囲に制約する。その上で、どんな方向に延ばすかは、個々人の自由とする。
(引用元:http://twitter.com/kenichiromogi

茂木さんの日本に対する意見は的確で、勉強になるものが多い。でもアメリカの高校から大学受験した身として、これらのツイートは現状を正確に反映しているのだろうか?ともやもやして、ツイッターにこんなものを始め、色々書いてみた。
アメリカの大学入試はほんときっついよー。だって、高校生活全てが問われるんだもの。総合成績だけでなく、クラスごとの評価も全部見られる。4年間ずっと気が抜けないし、かといって勉強ばかりしていればいい訳ではなく、クラブ活動やボランティアなんかもやってないとトップ大学には入れない。
その後読んだのが、MITでMBA留学をされていたLilacさんの
「日本の大学入試制度は本当に間違っているのか」
と、
カリフォルニアでコンサルタントをされている鈴木典子さんの
「アメリカトップ大学に進学できる学生とは?」
というブログ記事。こちらの方が自分の感覚に近いな、と思いました。

当たり前ですが、世の中に完璧なシステムというのは存在しません。私は日本の大学を経験したことがないので個人的な比較は出来ませんが、日本には日本の、アメリカにはアメリカの、美点も欠点もあるはず。
鈴木典子さんの記事に私のツイートを引用していただいたのですが、きちんとまとまった形で、個人的な感想を述べたいと思います。

アメリカの大学の大きな利点は、その流動性にある

まず、鈴木典子さんのブログから、アメリカの大学のレイヤー分けを下に引用します:
1)アイビーリーグ級のトップ大学 (20校くらい?)
2)全国レベルの知名度を持つトップ州立大・上位私立大(50校くらい?)
3)その州や地元限定で名前が売れている大学 (数百校?残り全部のボリュームゾーン)
(引用元:http://www.suzukinoriko.com/2011/02/blog-post_27.html

この三つのレイヤーは「全米トップ大学400校」などのランキングに載る大学だと思われます。アメリカには2000校以上(!)の大学があるので、第4レイヤーの大学の方が数としては圧倒的に多いんですね。芸術系など、ランキングに参加していない大学もあります。

ここで留意したいのが、アメリカの大学は毎年ランキングが発表され、順位が入れ替わる点です。

普遍的な偏差値という概念がない。学生の活躍や経営陣の方針転換などによって受験生人気が上がれば倍率も上がり、結果ランキング順位が変わります。
例えばノースイースタン大学。私が入学した頃は第3レイヤーの上の方だったのですが、ここ数年で数十位ランキングが上がり、第2レイヤーの仲間入りをしました。
在学中に上がっていくのは、自分が何かしら貢献してるかも!と思えて嬉しいものです(笑)

更に、特に私立は学校ごとの特色が強く、人気がある・レベルが高い分野も違います。
ハーバードの総合順位が1位でも、どの分野もハーバードが頂点にいるわけではない。日本のように「A君の成績なら当然東大受けるよね!」とはならないのです。
アメリカの高校生は地理や学生数、雰囲気などもかなり考慮して大学選びをしています。順位より、自分に合っているかどうかを重視する傾向。

大学間の絶対的なヒエラルキーがないという点に加えて、学生の流動性が高いのも、アメリカの大学の特徴であり、美点です。

上位州立・私立のトップの学生には、アイビーリーグの上位学生と比べて全く遜色ない、惚れ惚れするぐらい優秀な人がいます。
第2レイヤーの大学はHonors(優等過程)や奨学金を充実させていることが多い。経営が「どれだけトップレベルの学生を誘致できるか(→成功した卒業生から寄付金を集められるか)」にかかっているため、優秀な生徒獲得のためにあれやこれやの手を尽くしてます。
「トップ級の大学に受かったけど、奨学金が出るもう少し下の私立に行った」なんてのはよく聞く話。

編入も日本に比べればずっと盛んで、容易です。仮浪人なんてしなくても前の大学の単位がある程度認められるため、全くの無駄にはならない。州立大で最初の1・2年に良い成績を収めて上のレベルの大学に編入、のような計画も全然あり。
専攻や学科の変更も割と簡単で、入学時に進む道を決める必要がないのもいいところだと思います。

このように、「受験・入学の時点で決まってしまうこと」の割合が日本に比べれば低いアメリカの大学。
でも入り口をなるべく高い位置に設けた方がやはり有利ではあるので、普通は行ける範囲で一番良い大学に行こうとします。

アメリカの大学受験の大きな特徴は、一発勝負ではなく、高校4年間の総合的な経験を重視するところ。
このやり方は、日本の入試より優れているんだろうか?

私は、一概にそうは言えないんじゃないかなあ、と思っています。
アメリカのお受験戦争はレベルが上がれば上がるほど過酷だし、日本と同じ程度には歪んでいる。
ハーバードを崇拝して「隣の芝は青く見える」状態で突っ走る前に、ちょっと待ちなはれやアンタ、と言いたくなるのです。

次の記事では実体験を交えて、その理由を述べたいと思います。